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■木曽川川並図

 この「木曽川川並図」(原題・木曽川飛騨川筋川並図)は愛知県江南市前野町の旧家吉田(旧姓・前野)家に伝えられてきたもの。原図は縦27.0センチで絵巻物になっている。本書は読みやすいよう、それを少し拡大した。

 絵巻の巻末に、これは犬山の住人水埜氏が秘蔵しており、文政壬午(5年・1822年)に吉田家の亀仙が描き写した、とある。亀仙は同家23代の人で、名は雄正(かつまさ)、青松庵とも南窓庵とも称した。代々の庄屋職を引き継ぎ、また、寺子屋を開いて子弟の教育に当たるなど、この地方ではめずらしい文化人でもあった。

 著作に『先祖武功夜話拾遺絵本』や『山姥物語実記』などがある。また、父親の正勝(まさかつ)とともに当時の国語辞典とも言える『節用集』も出版した。筆者は戦国史料『武功夜話』21巻本も、この雄正が書き写したのではないかと推察している。

 本書は木曽川付近(岐阜県可児市)から伊勢湾に注ぐ河口までを描いている。書写された年は分かっていても、いつごろの時代の状態を描いているかまでは不明である。しかし、それほど古くさかのぼるものではない。

 絵の中に加納藩(加納城)の永井肥前守、長島藩(長島城)の増山河内守の名がある。前者の永井尚佐(なおすけ)は天保10年 (1839)、後者の増山正賢(まさかた)は文政2年(1819)の没である。書写された文政5年から考えると「秘蔵」されてきたという割りにはそれほど古いというわけではない。

 現在の木曽川は近代以降、幾度も改修され、特に犬山の下流、江南市付近は様変わりしている。本書は改修以前の貴重な姿をよく残しており、この絵図からいろいろなことが読み取れる。例えば、木曽川が前渡(岐阜県各務原市)から境川を通じて長良川と繋がっていたこともよく分かる。

 戦国時代、秀吉は蜂須賀小六や前野将右衛門ら川並衆の協力を得て、極秘のうちに墨俣の築城に取りかかった。七曽・八曽(可児市・犬山市)の山から木を切り出し、木曽川に流して草井(江南市)で集めて加工、それを前渡から墨俣へと川を使って運び込む奇策で城を完成させている。いまここから長良川に繋がる川はない。

 吉田家には墨俣築城に際して永禄寅年(9年)に描かれた一枚物の地図「美濃国墨俣責図」(前野将右衛門の署名と花押あり)も残されている。これには京都や堺までも入れられているが、収録したのは中心部分となる木曽川とその周辺のみに留めた。これほど古い時代の地図はめずらしく、川並図と見比べてみるのも面白かろう。

 


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