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“ぐうたら”マラソンのすすめ
 こんなワシでもウルトラランナー

【その1】

 

1カ月目 1年後は夢のフルマラソンに

 「走るなんて考えたこともない」
 「マラソンなど、とてもとても……」
 「それに忙しくって練習する暇なんかないよ」

 あなたはこんなこと、考えてはいませんか。そう、これはそういう運動とはまったく無縁の、あなたのような人をおこがましくもコーチしようという企画なのだ。しかも“ぐうたら”とあるように歯を食いしばって頑張るのではなく、のらりくらりとテキトーに楽しみながらやろうというのである。

 それでいて目標は思ってもいなかったフルマラソン――42、195キロを1年後に完走することにある。これから紹介するメニューをそれなりにこなしてゆけば、あなたは早くも半年後には10キロを、8カ月か9カ月目にはハーフを走り切っているはずである。

 かく言う筆者も子供のころは運動が大の苦手だった。体操の時間と聞くだけで胸が苦しくなり、校庭の片隅からみんなのしているのを眺めているような状態。おかげで体はめちゃめちゃ細く、陰でささやかれていたあだ名が「青びょうたん」に「栄養失調」「ガイコツ」だった。

 社会人になってからも「鉛筆より重いものは持ったこともない」ような毎日だった。運動らしい運動はしたこともない。そのため年とともに腹だけが異様に出てきて、その無様な姿はいま思い出してみただけでも恥ずかしくなるほどである。

 こんな“天性の”運動オンチが突然、マラソンに目覚めた。47歳のときだった。スーパーへズボンを買いに行くと何と胴回りが93センチもあると言われ、キングサイズ・コーナーへ案内されてしまった。いくら何でもこんなことはそれまでに一度もなく、ものすごいショックを覚えたものだ。

 それから悲壮な決意でマラソンをやることになるのだが、むろんその後の経過が順調であるわけがない。途中で歩かないことには1キロすら走れなかった。心臓があぶち、息が苦しい。

 しかし、マラソンの面白いのは時間なり距離なりに、努力が結果として確実に現れてくることだ。しかも、それらはやればやるほど延びてくる。「昨日はあそこまで走ったから、今日はもう一本先の電柱まで」「1キロ7分台だったので、今度は6分台に挑戦してみるか」――運動オンチでもオンチなりに欲が出てくる。

 いざ、何かのスポーツをしようとすると、道具を用意したりルールの知識なども必要になってきたりする。が、マラソンは運動靴さえあれば、やる気一つですぐにでも始められる。特別の技術がいるわけでもなく、ただ交互に足を前に出すだけで十分なのだ。

 そういう意味で言えば、マラソンは「運動なんて大嫌い」と思っているあなたのような人にうってつけのスポーツだ。そのマラソンの中にありながら、これから紹介してゆく“ぐうたら”マラソンは「走るのは嫌」「練習もきらい」「時間もない」という人にこそ、ぜひ実践してみてほしいものだ。かつての「おちこぼれ」がかつての「エリート」を見返すことだって決して夢ではない!?

 それはぼくが証明している。何十年ぶりかに同窓会で出会ったら、何をやらせてもうまかったエリートたちはすっかり貫禄がついていた。逆に、落ちこぼれだったぼくが走っている。

 若いころスポーツで鳴らした人だと、いくら努力しても自分の出した記録を破ることができず、なかなかやろうという気力が湧いてこない。その点、こちらは過去に栄光などがなかっただけに、やるたびごとに自分の記録を更新してゆく楽しみがある。やっていてこれは面白く、励みとならないわけがない。

 各地でマラソン大会が開かれている。参加者が多いのは40代からの中年であり、どちらかと言うとその多くが若いころはスポーツと無縁の人たちだ。それにはきっと、いま述べたような背景もあると思っている。

 さて、始めるといっても、いきなりとはいかない。この1カ月はウォーキングに努め、運動することを忘れてしまった己の体を奮い立たそう。胸を張り、手を振り、なるべく速く歩く――ウォーキングは何も特別のものではなく、会社の行き帰りやちょっとした散歩など、やろうとすれば日常生活の延長線上で簡単に行えるメニューだ。

 とりあえず1日1万歩を目指そう。歩くことがだんだん楽しくなってきたら、1週間に1、2回は3万歩に挑戦してみよう。さらに欲を言えば、こちらはゆっくりとした速度でいいから、また途中で何度休んでもいいから、この1カ月のうちに1、2回、暇を作って1日がかりで歩くように心掛けてみたい。

 一口に1万歩と言うが、歩き慣れていない人にとってはかなりの労力である。自動車で仕事をしていると、1日に3000歩も歩いていないことすらある。ましてや3万歩になれば、かなりシャカリキになって歩かないと、なかなか達成できる数字ではない。

 これから始めようとする人にとって、最後の1日ぶっ続けというのはかなりキツイ課題になるかもしれない。だから、これは無理をしてまでやらなくてもよい。しかし、ひょっとすると3万歩をこなせるようになった人には、何でもないことになっているにちがいない。

 実際にやってみた人にはもうお分かりかもしれないが、3万歩を歩いたその距離は20数キロになっているはずだ。1日かけてヤケクソになって歩くと、おそらくその倍くらいになっているのではないか。ということは、まったく意識しないうちに3万歩でハーフマラソンの距離を、人によって違いは出てくるだろうが、5、6万歩でフルマラソンの距離を歩いてしまっていることになる。

 マラソンは決して特別のスポーツではない。このように歩く延長線上にある。テレビの前でピールを飲みながらマラソン観戦するのも楽しいが、今度は自分自身がランナーとなって一汗流してみようではないか。

 マラソンをやろうとしているのに、あえて1カ月のウォーキングをすすめるのには、それなりの理由がある。筆者は短い距離でしかなかったが、いきなり走り始めてしまった。その結果、アキレス腱とひざの関節を痛め、マラソンへの思いとは裏腹に、整形外科に通うハメになってしまった苦い経験があるからだ。

 やるからにはやはり基礎となる体力を作っておかなくては。わずか1カ月でできるというものではないが、それでもやっておくに越したことはない。マラソンを始めるためのウォーミングアップとして、だまされたと思ってこの1カ月をウォーキングに励んでほしい。

 それに、歩くことは思っていた以上に楽しいものだ。苦しいランニングなどは後回しにして、まず体を動かすことの楽しさを実感したい。ときとして歩いているととんでもないアイディアが浮かんできたりすることもあるが、これは普段とは違った環境に身を置いていることから出てくるのかもしれない(だから仕事に行き詰まったときなどはくよくよしないで、とりあえず外へ出てみるのもいい)。

 以上のようにわずか1カ月ウォーキングに努めただけで、あなた自身がかなり変わってきたことに気付くはずだ。体力はつき、足は軽い。ひょっとしたら血圧も大分下がってきているかもしれない。

 お腹の出ている人だったら、かなりスマートになっているはず。実は、ウォーキングは出っ張ったお腹の脂肪をとるのに、ランニング以上に大きな効果があると言われている。これまでのズボンがだぶだぶになって、新調しなくてはならない事態も、それほど遠くはないのかもしれない。

 そして、何よりもビールがうまい。もう歩かずにはいられない。こうしてだんだん日常生活の中へマラソンをしのび込ませようではないか。

 

2カ月目 ウォーキングからジョギングへ

 スタート1カ月目、それなりに歩いてもらえただろうか。今月からはウォーキングからジョギングへ、マラソンランナーとしての第一歩を踏み出すことになる。暇を見つけて(ない人はひねり出してでも)外へ飛び出してほしい。

 今月の目標は1日5キロの軽いジョギング。いきなりはできないというのなら、途中で歩いたりしながらでもいい。5キロも走れば、額から心地よい汗が流れてくる。

 速さは無理しない程度、普通に息のできる、ゆっくりした速度でいい。1キロ6分台、5キロで30分。5分台で走ろうとすると結構苦しいが、6分台なら初めてでもそんなに苦にはならいはず。

 朝走るもよし、夜走るもよし。週に1、2回くらいは休んでも構わないから、これを毎日の日課とするようにしたい。1カ月に20日やったとして、月の走行距離はざっと100キロ。普通のランナーなら月2、300キロをこなすが、“ぐうたら”ランナーの駆け出しでは、とりあえずこれぐらいなら十分か。

 初回、1日1万歩を目標としたが、本当のことを言うと、歩いたくらいではあまり運動したことにはならない。やっぱり続けて最低でも2、30分は走らないと。これを達成すればかなり体がしまり、考え方までが体育会系になってきているかも?

 歩いているときには気付かなかったが、走り出すと妙に気になるものがある。それは周囲の目だ。「こんなに遅いと気恥ずかしい」「格好がサマになっていないのでは」。恥ずかしさが先に立ち、やめてしまう人もある。が、ご安心あれ。世間の目はそんなに注目してはいないし、もししていたとしても軽蔑どころか、むしろ走るあなたを尊敬のまなざしで見つめているはずである。

 中には独りで走るのはさびしいという人もあるかもしれない。それならランナーのいそうな公園や河川敷などへ行ってやるというテもある。いっしょに走る仲間ができれば楽しい(が、まだそうしたレベルについていけないかも?)

 マラソンは自分の足だけが頼りの、基本的には孤独なスポーツだ。それに練習をサボリたいという、怠け癖に打ち勝つ精神力もいる。ちょっとは実力のつく来月あたりに、ランニングクラブの楽しさなどについても触れてみたいと思っているので、そのためにもまずランナーとしトの基礎をこの1カ月の間にしっかり作ってほしい。

 話が前後するが、いきなり走り出さないこと。準備運動としてのウォーミングアップを念入りにして、ひざやアキレス腱などの故障を未然に防ぐようにしたい。また、終わってからのクールダウンも忘れないで。

 それともう一つ、せっかくランナーを志願したのだから、ランニングシューズを奮発しよう。いいものは1万円以上するが、その古いタイプなら3、4割引というのもめずらしくない。できることならランニングシューズの専門店へ行って、自分の足とフトコロ具合に合ったものを探し出したい。

 何事も目標のあった方が励みとなる。半年後ぐらいに10キロのマラソン大会に参加して“ぐうたら”ぶりを発揮しようではないか。そして、毎年開催される名古屋シティマラソンのハーフにチャレンジしてみよう。そのためにも、今日からさっそく第一歩!

 

3カ月目 走る仲間を見つけよう

 3カ月目、元気に走っていますか。もうランニングが生活の一部に入り込んできているのでは。走っている人も、いない人も、月間100キロから150キロくらいはこなしたいもの。

 さて、今月はランニングクラブへの誘い。一人でコツコツ走るのもいいけど、仲間とワイワイ過ごすのもまたいい。あちこちにランナーたちの集まりがあり、そんなメンバーに加わってみるのも励みとなる。  では、どうやってそれらを探し出すのか。

 一番手っ取り早いのは、身近なところ――例えば公園で走っているなら、同じようなランナーに声を掛けてみるとよい。1人で楽しんでいるように見えても、どこかのクラブに属していたりするからだ。また、知り合いなどに紹介してもらうというテもある。

 走る仲間たちが読んでいる雑誌に『ランナーズ』がある。ここにはクラブの活動紹介やメイバー募集の記事などが載せられたりしているので参考になる。自分に合いそうなものを見つけたら、遠慮せずに連絡をとってみよう。

 最近ならインターネットを利用する方法もある。掲示板などにメッセージを出せば、応えてくれる人もいるかもしれない。また、ランナーやクラブの中にはホームページを開いている人も多くあり、こちらからアプローチしてみるのもよかろう。

 それでもないとなれば、いっそのこと、自分から結成を呼びかけてしまうのもよい。どうせ遊びでやること、難しく考える必要はない。周辺にないのなら、逆に集まってくる可能性もある。

 一口にランニングクラブと言っても、そのタイプはいろいろ。練習中心の本格派もあれば、まったくしないものも。小は5、6人くらいから、大は100人を越すものもある。自分にぴったり合った居心地のよいクラブを見つけ、ランニングのある生活を大いにエンジョイしたいものだ。

 筆者は無名会というクラブに入れてもらっているが、足の遅いことと酒の強いことではかなり有名な?クラブだ。同じ地域にあるクラブがいくつか集まって、走友会連合という横の連絡組織も作られている。仲間がいると、大会などの情報がはいってくるので、この点でもよい。

 いろんな人がいるけど、走ることを楽しむという点では、だれもが一致している。気の合った仲間と触れ合うのは、日ごろの練習の刺激ともなる。走ることに面白さを感じてきたら、適当なクラブを探して顔を出してみようではないか。

 

 

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