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“ぐうたら”マラソンのすすめ
 こんなワシでもウルトラランナー

【その2】

 

4カ月目 遠足「LSD」を楽しもう

 LSD――と言っても、幻覚症状の現れるアレではない。Long・Slow・Distanse。長い距離をゆっくりと走るトレーニング方法の一つだ。

 これをやることのメリットは多い。ランナーに大切な持久力が養え、スタミナの増大にもつながる。リラックスして走るので、自分なりのリズムも身につく。おまけに体が絞り込まれ、それがひいては足やひざなどのケガ防止にも役立ってくる。

 「そんなこと言ったって、長い距離を走るのは大変だよ。せいぜい5キロか10キロぐらいしか走れていないというのに……」

 こんな声も聞こえてきそうだが、LSDはやってみると意外に楽しいものだ。一流ランナーはあまり休まないが、われら“ぐうたら”ランナーは歩くも休むも大歓迎。それこそ遠足に行くようなつもりで出掛ければよい。

 ゆっくり休める日ができたら、半日なり1日をこれに当ててみよう。月1回か2回もやれば御の字。より長い時間をかけ、より遠くを目指そう。

 実際に走ってみると分かるが、キロ7分か8分のゆっくりした速度だと、どこまででも走っていけそうな気分になってくる。普段の練習とは違い、走るのが苦しくなったら歩けばいいし、それもだめなら休めばいい。走っている途中に面白そうな史跡や寺社などがあれば、立ち止まってのぞいてみる好奇心だってほしい。

 とにかく「楽しく」「マイペース」でやるのが、“ぐうたら”ランナーの基本。ぼくは出掛けるときに万歩計を付け、どれだけ歩数がのびるかを楽しみノしている。気分がよければ自販機で缶ビールを買ってしまうことだってあったりする。

 先日、岐阜県のお千代保稲荷まで行ってきた。木曽川や長良川が悠々と流れ、お千代保稲荷に出ていた露店も面白かった。往復50キロちょっと、1日がかりの遠足だった。

 長い距離を走ることになるので、そのコースもいろいろと変えてみたい。大きな川に沿って走るのもいいし、ときには山へ分け入ってみるのもいい。そんなときには車を捨てたその場所がスタート地点であり、またゴール地点だ。

 こうしたLSDを1人でやるのもいいが、仲間といっしょにやればもっと楽しくなる。ゆっくりした速度だから会話もはずむし、1人だとやめてしまうかもしれないのに、みんなに引っ張られて予想外にのびたりすることもある。終わったあとには温泉かスーパー銭湯などで一汗流せば、あとはお決まりの宴会コースに突入したりして、最高の休日となること請け合いである。

 2回目で「できるだけ毎日5、6キロは走るようにしたい」と書いた。が、本当のことを言うと、ぼく自身は練習をすることはほとんどなく、月に2、3回このLSDをする程度だ。まさに“ぐうたら”ランナーの“ぐうたら”たるところだが、LSDはそれほど楽しいということでもある。

 それに何よりもLSDをやると、長距離を走るのに自信がつく。ぜひおすすめしたいが、夏場は特に帽子や水などを忘れないように。ジュースなどを買う小銭はもちろんだが、ときにはリタイアすることも考えて、電車賃やタクシー代など、それなりのお金も用意しておきたい(実際、岐阜からタクシーで帰宅したこともあった、トホホ……)。

 

5カ月目 勇気を出してスポセンに行こう

 マラソンは交互に足を前に出して走るだけの単調なスポーツだ。変化がほしいと横や斜めに走っていたのではショーブにならない。考えてみれば、難しいルールもチームプレーもあるわけではなく、そんな単調で原始的なところが魅力の一つと言ってもいいのかもしれない。

 しかし、日ごろの練習で走ってばかりというのもつまらない。ときには変化をつけるため、スポーツセンターなどに行くことをお勧めしたい。これにより、他の筋力を鍛えることもでき、体力のアップはマラソンにも必ずいいはずだ。

 いまは公共のスポーツセンターやプールなどがどこにでもできている。民間のように入会金などを取られることもないし、料金的に見ても1回単位で数百円からと安い。“ぐうたら”ではあるがマラソンを志した以上、これを利用しないという手はない。

 本当のことを言うと、筆者にとっても当初、スポセンの敷居は高かった。図書館などへは気軽に行けても、なかなか入る勇気が湧いてこない。こんなところへ通ってくるのは、筋肉むきむきのマッチョマンばかり、との先入観があったからだ。

 ところが実際に行ってみると、われわれとはそんなに変わらぬ、運動にあまり縁のないような人たちが多い。本格的にやっている人はもっと別のところへ通っているにちがいない。しばらく通ううちに友達もできてきたりして、こういうところで汗を流すのも結構楽しいものとなる。

 ほくは1週間に1回を目標にしているが、これすらなかなか難しいのが現実。こなすメニューは前後のストレッチングに各10分、自転車15分から20分、ランニング10分から15分(ルームランナーではあきがくる、と弁解)、それに各種機械類20分から30分といったところ。たまにプールへ足を向けることもあるが、こちらは息継ぎができないので苦しいし、やることがない(要するにカナヅチ、いや浮くことはできるのでカナヅチの柄か)。

 トレーニングを自宅でやれればもっと手軽で安上がりと、通販などでルームランナーや自転車を買う人もいる。が、せっかく買い込んでも、使いこなしている人はほとんどいない。それよりもスポセンへ行ってみんなとワイワイやりながら、いろんな種目をこなすようにした方がよほど楽しいし、体にもいい。

 また、こうしたところに通うこと自体、生活にメリハリをつけられていい。行くために時間のやりくりをすることになるから、それだけ日々が充実した感じになってくる。忙しい毎日だとは思うが、せめて1週間に1度、スポセンに通う時間をひねり出したい。

 これとは別に、もう一つおすすめしたいのが自転車である。通勤時などには電車や自動車をやめ、たまには自転車で通う日を作ろう。ランニングとは異なりひざに負担が少なく、しかも足の筋肉を鍛えるのに役立つ。

 “ぐうたら”ランナーとしてはラクなウォーキングを強くおすすめしてきた。それと同様、走るのと比べたら自転車のありがたみが身にしみて分かる。厳密に言うと走るときに使う筋肉とウォーキングや自転車のときに使う筋肉とは違っているが、なあに、足の筋肉であることには変わりない。

 知人の中には日ごろ練習らしい練習をしたこともないのに、大会なヌではいい成績を出してしまう猛者が結構いる。そんな人たちは自転車通勤をしていたり、あるいはまた、歩け歩けクラブに入っていたりする。ランナーではないのにランナーに勝てるというのは、このうえないユーエツ感にひたれるにちがいない(こちらはよけい悔しい)。

 夏場はさすがのランナーも休みどき。走るのをちょっとやめ、エアコンもきいているスポセンへ行ってみよう。そして、週に1回くらいは通えるよう、日ごろの練習メニューの中に入れておきたいものだ。

 

6カ月目 名古屋シティへ! いざ、出陣

 まじめにやってきた人なら、走り始めて半年ほどになる。腕ならぬ足が鳴る人も多いのではないか。そんな人にはもちろん、“ぐうたら”に過ごしてしまった人たちにも、打って付けの大会がある。

 しかも、それは地元・名古屋で開催される。毎年「勤労感謝の日」11月23日に行われる名古屋シティマラソンがそれ。いまではすっかり“名古屋名物”(どころか全国的)になった感じだ。

 一般にはあまり知られていないことだが、1万5000人以上の参加するマラソン大会はわが国でも最大規模のものだ。北は北海道から南は九州まで、全国各地からランナーがやってくる。会場となる瑞穂陸上競技場はそんな出場者たちでごった返し、緊張の中にも華やいだ雰囲気に包まれる。

 コースはジョギングの4キロ(定員8000人)、10キロ(4500人)とハーフ(2500百人)の三つ。各自の実力に応じて選べるので、適当なコースを選んでぜひ参加してみてほしい。自分一人で走っているのもそれなりに楽しかろうが、ときにはこうした大会に出て多くの仲間といっしょに走ってみるのも面白いし、それに自分のレベルを把握する目安にもなる。

 申し込み期間は年によっても違うが、大体9月10日から10月31日まで。先着順に受け付け、定員に達し次第、締め切られる。これとは別に陸連公認の日比野賞(ハーフ)も同時開催されるが、むろん“ぐうたら”ランナーには無縁のものだ。

 筆者が初めて大会に出たのは犬山マラソン10キロコースだった。いま思うと自分でもおかしくなるほど緊張したものだが、それでも申し込みを終えてからというもの、目標ができて日ごろの練習にも一段と力が入った。結果は50分を切り、「火事場の馬鹿力」を実感することができた。

 その日は実際に走っていても、関門に引っかかるのではないか、とひやひやだった。それが予想していた以上にいいタイムでゴールすることができ、あとから喜びがじわじわとこみ上げてきた。それ以降、ゴールしたときの気分は何度味わっても、実にいいものだ。

 まだ走り足りないという人も、この機会に参加してみてほしい。見なれた市中の風景も走りながら眺めてみると新鮮に思えてくるし、沿道の応援はきっと実力以上の力を発揮させてくれるはず。目標があると練習の励みにもなるので、これを機会に各地で開かれる大会に出てみるのもよい。

 

7カ月目 壁に備えろ、初めはゆっくり

 いよいよマラソンシーズンの到来――。日曜日には大抵どこかで大会が開かれており、暇を見つけて参加してみたいもの。まずは1カ月に1レースを目標に、スケジュールを立ててみてはどうか。

 初めての出場となると、どうしても頑張ってしまいがち。その気持ちも分からないではないが、ハーフにしろフルにしろ、実際に走ってみると思っていた以上に長い距離だ。前半は最後尾のグループについて行くくらいの心構えでいてもいい。

 何を隠そう、かく言う筆者が当初はいつもこの逆をやってしまっていた。開会式から志気を鼓舞される、号砲とともにランナーが飛び出す、沿道からはヤンヤの声援が飛ぶ。こうした状況の中で「ゆっくり走れ」と言うのは無理かもしれないが、そこはみんなとは違い「自分はビギナーである」「“ぐうたら”ランナーだ」ということを十分自覚しておく必要がある。

 初めから飛ばしてしまうと、時の流れとともに、追い越されることになる。ええっ、こんなおじいさんが……ああ、おばさんにも抜かれてまったがや……なんで女性はこうもタフなのか……。思うように走れなく、早くも挫折感に襲われる。

 ゴールはとてつもなく遠い。前半は押さえに押さえ、余力を後半に蓄えておくこと。ハーフなら15キロくらい、フルなら30キロくらいが壁だ。本当に苦しくなるのはこのあたりからで、その意味でショーブどころでもある。

 前半に飛ばしていた当初は折り返し点を過ぎたころから「この調子で行けば結構いいタイムが出る」とほくそ笑んだものだ。が、その通りにいったことは悲しいかな、いっぺんもなかった。壁の前後で必ず足がもつれ出し、しまいには歩くこともやっとという悲惨な状態に。快調に追い越してゆく人たちがまるでスーパーマンのようにも思えてくる。

 それが逆に、前半を押さえるようになり、走り方が変わってきた。後半は曲がりなりにも追い抜ュ立場になった。これはこのうえもない快感だし、大きな励みにもなる。

 実際に壁からはあと3分の1を残すのみだが、気持ちの上ではまだ半分あるものと覚悟しておいた方がよい。このあたりになると疲れてきているので、それほど長い距離に感じられてくる。そのためにもくどいようたが、前半を絶対に飛ばし過ぎないことだ。

 こうしたことを十分に計算に入れておくと、頑張った向こうに栄光のゴールがある。時間内に駆け込んだ喜びは何物にも代え難い。痛い足をひきずりながらも、あなたはこれまで味わったこともないような、いわく言いがたい感慨にひたることになるだろう。

 さあ、レースにチャレンジしてみよう。また新たな一ページが始まる。

 

 

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