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名古屋弁講座 その14

「およづく」

名古屋弁ならではの便利な言葉

 忘れもしない、中日が11年ぶりにセ・リーグの優勝を決めた日のこと。友人と居酒屋で美酒に酔い、いい気分で別れた。家への帰り道、腹がへっていたので何気なくラーメン屋へ入った。

 出来上がったベトコンラーメンを、カウンター越しに中腰で受け取った、その時だ。腰にピリッと電気のようなものが走った。瞬間、話に聞くギックリ腰だと思った。やがてアツアツ・ギトギトのベトコンラーメンまで加わって、額からアブラ汗がにじみ出てきた。半分食べるのがやっとだった。

 ひーひー言いながら家に帰り、その日はすぐに寝た。が、体を動かすたびに痛いし、仰向けに寝ているだけでも痛い。翌日から整形外科への通院が始まった。

 それにしても、よりによってたかがラーメン一杯で。ぐうたらではあるがマラソンもしている。つい先日には四国一周の自転車旅行体験記を、地元の郷土出版社から出してもらったばかりだ。みんなから「年に似合わず、よくやるねえ」と言われ、すっかりいい気分になっていたというのに……。

 そして、痛む腰をさすりながら思った。ああいう状態のことを名古屋弁ではどういうのか、と。すると、あるんですね、これが。

 「およづく」−−日常ではあまり使わないが「およづく」という、まさにぴったりの言葉がある。腰を浮かして前のめりの状態になり、何か物を取ろうとする不安定な姿勢のことだ。こうした前かがみになる状態を一語で言う共通語は見当たらず、強いて言えば「及び腰になる」あるいは「前かがみみなる」ということか。

 物を二人で協力して持つことを名古屋弁で「つる」と言っている。「つり下げる」とか「魚をつる」「首をつる」というような「つる」はあっても、こうした意味の共通語はない。方言の方が微妙な表現のできることが多く、普段、共通語を使うように指導している学校の先生でさえ、「机をそんなふうに引きずらないで。ちゃんとつりなさい」などと言っている。ギックリ腰になって「およづく」のよさを見直した次第。

 「そりゃ、てゃーもにゃーこと、やりゃーたなも。そんなおよづぃーたぐりゃーでや」
 「そーいや、あそこの指物屋の大将、かなづちをとろうとおよづぃーた拍子に、ぎっくり腰になってまわっせたということだがね。きーつけんと、あぶにゃーねえ」
 「いてゃーだろう。わしはなんきゃーもやっとるけど、あれはねっちもさっちもなれせんでね。ここではよなえーてまうだわ」

 整形外科はお年寄りのたまり場で、名古屋弁がハンランしていた。名古屋では「にっちもさっちも」は「ねっちもさっちも」と言うでね。「たいもない」は「とんでもない」とか「大変な」とかの意味だ。

 どうせギックリ腰になるくらいなら、『広辞苑』を持ってとか、本の詰まったダンボール箱を持ってとかであってほしかった。幸い3日間の通院でなんとか治ったが、ラーメン一杯でなってしまったというのは恥ずかしい。ある人が「その年で初めてならまんだええわ。おれなんか26のときにやっとるでよお」と言ってくれたのがせめてもの慰めだった。

 ギックリ腰になった日、あの堀川に飛び込む熱狂的なファンがいた。そして、東海村ではあってはならない臨界事故が起きた。わが身も名古屋も日本も、ああ、多事多発の一日でした。

 


 

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