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名古屋弁講座 その15

「ショウヤ」

語源は村役の「庄屋」からか?

 子供のころ、一番熱中した遊びがこれ。共通語では「メンコ」と言ったそうだが、そんな呼び名を使ったことはいっぺんもない。もっぱら「ショウヤ」あるいは、くだけて「ショーヤ」だった。

 「ショーヤ、やろみゃーか」
 「よーし。きんのう負けてまったで、今日はぜってゃーに勝たなかん」

 丸や四角のボール紙に、相撲取りや役者などの絵が書かれていた。市川右太衛門や嵐寛寿郎、片岡千恵蔵などに交じって、美空ひばりや松島トモ子、小鳩くるみなどもあった。彼女らがいかに早くから、名子役として人気があったかが分かる。

 地面に置かれた相手のショウヤに、自分のショウヤを打ちつけ、それがひっくり返えればもらえる。風であおるようにして取ったので、確かこの基本的な遊びを「あぶち」と言っていた。「あぶち」は「あぶつ」の名詞形で、「あぶつ」とは「あおる」意の名古屋弁である。

 簡単にひっくり返らないよう、裏に油やロウを塗ったものだ。ロウをたらしているうちに新聞紙へ燃え移り、あやうく火事になりそうなこともあった。遊びとはいえ一種のバクチだから、細工をするにも力が入った。

 調子がよいと手元にどっさり貯まってウハウハだが、負けが重なると子供心にも悔しくて悔しくて夜も眠れない。だから一夜明けるとまた「ショーヤ、やろみゃーか」ということになる。あまり力を入れすぎて、右腕がズキズキ痛んだほろ苦い思い出までよみがえってきた。

 では、「ショウヤ」の名称は一体どこから来たのか。東京や大阪で子供のころを過ごした人に聞いても、ほとんどが共通語の「メンコ」ばかりである(大阪では「ベッタ」「ベッタリ」とも言ったらしい)。「ショウヤ」はどうやら名古屋ならではのものらしい。

 「ショウヤ」と言うと、真っ先に思い出すのか「庄屋」だ(いや、これぐらいしか出てこない)。「庄屋」は江戸時代の〃村長〃役のことだが、関東では「名主」と言い、関西では「庄屋」と言った。名称のうえでは名古屋は完全に関西圏に入れられていたわけだ。

 「ショウヤ」と「庄屋」がどういう関係だと深く追及されると答えに窮するが、「ショウヤ」の語源について考察したものがないので、想像をたくましくせざるを得ない。ひょっとすると名古屋では、これが出始めた当初、ここに庄屋さんの絵が書かれていたのではないか。はっきりした証拠をつかんでいるわけではないので、あまり大きな声で言えたものではないが、庄屋さんは村の〃顔役〃だったでね。

 人のいい庄屋さんは「これこれ、何だ、そんなところへわしの顔を書いて」と言いながらも、まんざら悪い気はしない。一方、意地の悪い庄屋でも、そこに描く価値はある。遊ぶときに「くそっ、このーっ」(パチン)、「ええい、くそっ」(パチン)とやり、うっぷんをはらすことができるからである。

  「ショウヤ」の語源については、いささか怪しいが、これぐらいのことしか浮かんでこない。しかし、共通語の「メンコ」は至って簡単である。顔を意味する「面」に「うそっこ」「かわりばんこ」などの接尾語「コ」が付いてできたもので、「ショウヤ」とは違って深みも謎もあったものではない。

 それに「メンコ」なんて気軽に言うけど、あんなの、一字間違うと恥ずかしくて、とても口にできたものではない。この際、書くのだからまだいいが、ヤクルトの応援団が人前で「ハア〜、踊り踊るな〜あ〜ら」と「東京音頭」をやり出すと、もういかん。いつ聞いてもあのお囃子が「チンコマンコ、チンコマンコ」と言っているとしか思えない。

 ええっ、そんなことを言うのは、お前だけだって? あれっ? ひょっとすると本当は「メンコ」でもよかったんだけど、名古屋人は間違うのを恐れて「ショウヤ」と呼ぶようになってしまったのか。どなたか「ショウヤ」の語源の分かる人、教えてちょーせんか。

 


 

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