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岐阜県山岡町

寒天を売り物にした「ヘルシータウン」 「イワクラ」も町おこしの好材料

ダムの建設、急ピッチ
双眼鏡で工事現場に?

 「あれっ、何だ!?」

 土岐川の支流、小里川(おりがわ)伝いに町へ入ると、突然、ゴンドラが左手の山から滑り降りてきた。それは巨大なバケツだった。川の上でとまったかと思うと、コンクリートが注ぎ込まれた。

 川ではダム建設の真っ最中だった。堰堤は7、80メートルほどの高さがあり、すでに7分ほどは出来上がっている。少し上流へ行った高台の小公園から備え付けの双眼鏡をのぞくと、ダンプカーやブルドーザー、さらには人の動きまでが手に取るように眺められた。

 それにしても、すごい迫力だ。両岸の山はケーブルで結ばれ、20トンの大バケツが休むことなく行き来している。干上がった川を遮断するように逆三角形の巨大なコンクリートの固まりがそびえ立ち、その上で多くの人や機材がひっきりなしに動き回っている。

 ダムの本体工事は平成8年に始められ、完成は同15年になる予定だとか。案内には「洪水調節や河川環境の保全、発電などを目的とした多目的ダム」「新設される発電所の最大出力は1800キロワット、約600世帯分」などとある。大がかりな工事を目の当たりにすると、発電量600世帯とは意外なほど控え目な数字のようにも思えてくる。

 小公園と思っていたが、ここはダムを紹介するために設けられた「小里川ダムふれあい会館」の庭園でもあった。館内にはダムの完成模型をはじめ、周囲の地形なども分かる大きな航空写真やダム建設に使われる機材の模型、岩石の標本など、様々なものが展示されていた。また、大型スクリーンを使ったマルチビジョンではダムの概要や山岡町の案内などのプログラムもあり、初めてこの町を訪れた者にはなかなか興味深い施設だった。

 隣接する岩村町や明智町は何度も訪ねたし、近くの串原村や上矢作町へも行ったことはある。が、山岡町はなぜか初めての訪問だった。町へ入った途端に思わぬ光景に出会い、これからの旅がいよいよ楽しくなってきた。

 

海がないのに潮の香?
日本一、細寒天の生産

 さて、まずは町の顔にもなっている寒天の探訪だ。町では冬季の凍てつくような寒さを利用して寒天作りが盛んで、特に天然の細寒天は全国一の生産量を誇っているとか。原料のテングサは海外からも来ているそうで、山あいの地に潮の香が漂っているというのも、考えてみれば愉快な話だ。

 この寒天、食物繊維が多く含まれ、カロリーも低いことから、美容と健康からも人気を集めている。町では「ヘルシータウン」を合い言葉に、寒天料理の開発にも意欲的。役場前には「寒天ラーメン発祥の地」と書かれた看板が掲げられ、町のあちこちで天日で干す風景も見られた。

 明智鉄道「山岡」駅前の「ヘルシーハウス山岡」。寒天を使ったうどんやそばなどいろいろな商品が並べられ、レストランのメニューには寒天懐石料理までもある。早速、寒天ラーメンセットとやらを注文してみることにした。

 おやっ? 出てきたラーメンは寒天ばかりで、肝心のメンが一本もない。一口食べてみれば、なるほど、まぎれもないラーメンの味だ。ごはんの上にも寒天が乗せられ、サラダや漬け物にまで付いている。

 確かにヘルシーかもしれないが、これで満腹感は味わえるのか。しかし、後になってその思いは杞憂と分かった。どうやらお腹の中で膨張してくるらしく、その後、山歩きをすることになったが、腹持ちのよさにはすっかり感服してしまった。

 こうなると、あなどれない。最近、体重が自己新記録の70キロをオーバーし、ダイエットが人ごとではなくなってきている。帰途につく前に再びここを訪れることとなり、おみやげに寒天ラーメンや寒天うどんなどをどっさり買い込むことになるのだった。

 

謎の巨石群、町内に点在
超古代のロマンを秘めて

 山岡町はなぜか巨石文化が花開いたところだ。町内のあちこちにいわくありげな巨石群が点在し、超古代へのロマンをかき立てている。平成11年には同じような遺構を持つ自治体関係者やこの分野の研究者らが集まって「イワクラ(磐座)サミット」も開かれ、田沢ダム近くにある巨石群には「磐座の森」と名付けられた探索コースまで作られていた。

 磐座はその昔、神様の鎮座するところと考えられていた遺構で、現代で言えば神社の本殿に相当するものか。何はともあれ現地に出掛けてみることにした。森の入口に当たるダム湖畔に建てられていた石碑をのぞき込むと、それは『神々の指紋』で有名な英国人作家グラハム・ハンコックの来町を記念して造られたものだった。

 森の中では巨大な岩が次々と目の前に現れてきた。祭主などの座ったと考えられるストーンシート、拝殿にも相当する“祭壇石”ストーンテーブル、多くの岩を組み合わせた磐座、そして“大岩”御神体石など。そうした一つ一つに見とれていると、ここを舞台とした古代人たちの暮らしぶりや祭りごとなどについて、いやが上でも考えざるを得なくなってくる。

 30分ほど歩くと、やがて山頂に出た。右手に恵那山がひかえ、そのはるか向こうに見える雪を抱く連山は中央アルプスか。吹き抜ける風がほおに心地よい。

 帰り道にはもっと迫力に富む遺構が現れてきた。二つの岩を並べるように立てたメンヒル、それに天井岩を置いた格好のドルメン、大小の岩石を寄せ集めた組石遺構。中にはペトログリフと言って、記号や文様などの刻み込まれたものもある。古代人たちの残した不思議な〃指紋〃を前に、ただただ首をひねるばかりであった。

 これらは一説に、紀元前4000年ごろに造られたものだとか。ということは、縄文早期から前期にかけての時代となる。町民の間では「山岡イワクラ文化研究会」という会も結成され、遺跡の保存や謎の究明に取り組んでいるそうだ。

 

寒天の里にも二つの温泉
お湯よし景色よし、山岡滝

 この日、泊まったのは駅前にあった古風な旅館。この家では年間を通じて寒天の製造もされており、海外から技術指導の依頼も来るほどだとか。カニ料理に舌鼓を打ちながら聞く、おかみさんの話が面白かった。

 翌日、飯高観音の名で親しまれている寓勝寺や県営の大牧場もある夕立山高原、恵那市との境にある寿老滝などを見て回った。この町には温泉も二つある。日帰り施設「花白温泉」に立ち寄ったが、この日はあいにく休みだった。


山岡滝温泉の庭園内にある滝
山岡滝温泉の庭園内にある滝
 旅の最後はもう一つの温泉「山岡滝温泉」。こちらは景勝に恵まれた渓谷の中にあった。せせらぎの音に導かれるようにして滝見の門をくぐると、赤い橋の向こうに何段もの岩を滑り落ちてくる優雅な滝が望めた。

 滝のある日本庭園には「滝見の間」「星の間」などと名付けられた旅館の離れも何棟か建てられている。折しも新緑のシーズンとあって、散策に訪れる人も何人かいた。ここはどうやら山岡町の穴場のようで、今度訪れるときは一泊してみたい気分にもなってくる。

 昼食の前に本館で一風呂浴びることにした。泊まり客でなくても食事ができ、日帰りの入浴も可能だ。うれしいことに定食以上のものを注文すると、無料で温泉を楽しめるサービスまでもある。

 早速、この恩典に浴することにした。温泉はラジウムを多く含んでおり、リウマチや胃腸病、皮膚病などにいいそうだ。静かな山里でのんびり湯にひたっていると、心の中までがほかほか暖かくなってくるようだった。

 

[情報]山岡町役場
〒509-7603 岐阜県恵那郡山岡町上手向584
TEL:0573-56-2111

 

 

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