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いまこそ注目せよ、太田三次郎

 太田三次郎という名古屋出身の海軍予備大佐をご存じだろうか。大正3年、戦艦建造を巡る大がかりな汚職事件「シーメンス事件」が起きると、海軍の粛正を求めて敢然と立ち上がった。山本権兵衛内閣はトカゲの尻尾切りで事態を切り抜けようとするが、太田の勇気ある告発に国民からの批判が高まり、ついに内閣は総辞職に追い込まれた。

 「(不正は)海軍に籍を置いたほどの者なら、だれ知らぬものもいない。ただ自己を犠牲にしてまで起つ勇気ある人間がいないだけのこと」

 「(逮捕された)彼らは雑魚(ざこ)の魚(とと)交じりで、呑舟(どんしゅう)の魚はそれ以外にある。これを捕らえなければ海軍廓清の実はあがらぬ」

 正義の告発者、太田はその3年後に心臓麻痺で死ぬ。53歳。太田の支援組織「大正義会」の手により昭和区八事の興正寺に顕彰碑が建てられたが、いまはこれに気付く人すらまれだ。

 証券から始まった汚職は大蔵省や銀行業界、さらには日本銀行にまで広がっている。太田の言う「勇気ある人間」は内部に誰一人としていなかったのか。すでに何人かの逮捕者を出しているが、「呑舟の魚」を逃がすようなことがあってはならない。

[ガイド]興正寺は〃尾張高野〃とも言われる真言宗の寺。八事山の広大な敷地に堂宇が点在しており、ぶらっと訪ねてみるのも面白い。碑は山門をくぐった右手にある。地下鉄「八事」下車、すぐ。

 

■いまこそ注目せよ、太田三次郎
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